新春対談

ではなく、多摩美術大学の特別講義。でもまあ、ノリは新春対談かな、やっぱし。

細野さんはここの客員教授なので年に数回授業をする。
そして年に一回はここの教授で芸術人類学研究所所長の中沢新一さんと対談をする特別講義があるのだ。
この日の特別講義は授業をとっている芸術学科の学生だけでなく、他の学科の学生も聴講できるということで会場の小ホールは満員になっていた。

細野さんの授業は音楽で、自分が聞いてきて影響を受けた、というか体に染みこんでいる音楽とその生まれた背景などをDJのように聞かせながら解説し、今の音楽も問いかけるという内容の濃いもの。
そして特別講義は中沢さんとの楽しい対談で進行するのだから、実に面白い。
多摩美の学生はシアワセである。

アメリカで30年代の不況の中で素晴らしい音楽が生まれてきたことを糸口として、60年代の東京の貧しくも混沌とした一種の「自由」な空間の写真も見せながら、再びやってくるであろう「貧乏」の時代をむしろチャンスと捉えて「人間らしく」「野性的に」生き延びようという、メッセージを学生に伝えていた。
そのときにかけた美空ひばりの「港町十三番地」をあらためて聞いてみたら、その音作りの自由なこと!!
ドラムレスでイントロのメロはバンジョー。それにユニゾンエレキギターが絡んだり、アコーディオンやバイオリン(ビオラか?)も入ってくる。モノラルなのにスタジオの空間、空気感が生々しい録音!!
なんて今の僕らは形式的に音楽を作っているのだろうと反省してしまう。

この不況、僕自身はずっと不景気だったので今まで通りやるだけなのだが、それだけではなく、精神的には「焼け跡を生き抜く何でもアリ」の闇市感覚を持って別次元の復興を目指すべきだと思った。

講義のあとは芸術人類学研究所で軽い打ち上げ。学生も混ざっての自由な雰囲気は中沢さんならではのもの。細野さんにも学生が次々やってきて話しをしている。この研究所にも闇市のようになっていく要素が潜んでいるのだろう。

学生気分でこの場にいる僕はここの特別研究員を拝命しているが、来年度からは非常勤講師として細野さんの授業をサポートする。音楽の授業で神楽の中に「自由に」「野性的に」「多様に」存在するこの列島の伝承音楽をテーマにするつもり。中沢さんからは「学生を神楽に連れて行ってよ」と言われているので、これから多摩美を受けようという人はお楽しみに。