初体験

micabox2008-08-16

16日に新野の盆踊りに行ってきた。
新野は長野県の南部、阿南町の標高約800メートルほどの高原盆地に田んぼが広がる町で、真冬に行われる「雪祭り」が有名だが、この盆踊りはそれに対応する「夏祭り」として捉えることも出来るという大事な行事だ。
ここの特徴はいろいろあって、まず楽器を使わない「唄だけ」で踊るということ、そして14,15,16日の夜に夜を徹して行われるということ、そして最後の明け方に「神送り」があるということ。盆踊りは今、仏教行事として定着しているがここでは「神仏混淆」で御嶽行者が神事を執り行って盆踊りが行われるのだ。
夜の8時くらいから踊りが始まる。新野のメインストリートに櫓が建てられその上で音頭取りたち5,6人が輪になって唄いながら踊る。そして道路では大勢の人たちが細長い輪を作って、音頭取りの唄を受けて唄いながら踊る。
よくある盆踊と違い太鼓でリズムをキープしてるわけではないので音頭取りの技量が必要で、シンプルではあるがむずかしい。これを交代しながら朝まで続けるのである。踊りも静かだがゆっくりとトランスに入る感じで、おそらくランニングハイのようになってやめられなくなるのではないだろうか。一晩中休みなく踊り続ける人はいないだろうが常にたくさんの人が踊っている。
最初のうちは子供たちが多い、お盆で里帰りしてきたのだろうがかなりの人数だ。そして夜が更けるにしたがって大人が増えてきて3時頃がピークだそうだ。実はこの頃は僕らは仮眠をしていて5時にまた起き出した。
もう明るくなっていたが踊りは続き、いよいよ神送りである。櫓の裏の踊りの神様とされている「市神様の祠」で神事があり和讃が唄われ、それから少し離れた「太子様の祠」で同じく神事と和讃がある。そしてまた踊りの場に神送りの一行が戻ってくるのだが、神送りが終わると踊りはやめなくてはならないことになっているのでまだまだ踊り続けたい若者たちが、その行く手を遮るように輪踊りを始める。神送りの一行はこれをこわしていくのだが、輪がこわれる直前は肩を組みながらぐるぐる回って大声で歌を歌うのだ。通りを抜けるまでこの踊りの輪が次々と生まれて全体が一気に盛り上がってクライマックスを迎える。
十代から二十代の男女に混じっておじさんおばさん、じいさんばあさん、まさに老若男女が飛び切りの笑顔で一体になってこの踊りを踊っているのを見ていたら涙が出てきた。「美しい」。
観光化もされずイベント化もされず「神仏精霊と共に生きる」姿を素朴かつ濃厚に見せてくれた「新野の盆踊り」だった。