尾八重神楽

micabox2007-11-22

22日の便が取れなかったので21日に宮崎入り。同行は二人。久しぶりに自称「伝承音楽研究所」全員が揃う。別名というか実体は「神楽三馬鹿」であるが。
宮崎空港から高鍋までJRで行き、高見乾司さんに迎えに来てもらい森の空想ミュージアムへ。
http://www2.ocn.ne.jp/~yufuin/kagurakikou.htm
22日昼にもうひとりの神楽ツアー参加者のKさんが到着。夕方尾八重(おはえ)へ向けて出発。尾八重は西都市に入っているが九州脊梁山地に深く分け入り「この先に人が住んでいるの?」と思ってしまうような山道を上がったり下がったりした先にある集落で、今話題の「限界集落」一歩手前の村だが、中世には城があったという場所で石積みも立派、かつてはこのあたりの中心地だったのである。日本は深い。
去年も来たのだが、去年は雨で体育館の中で行われたため、見た気がせず、またやって来た次第。この日は快晴で雨の心配全くなくて一安心である。
受付で「御神前」を3000円奉納。このあたりは焼酎二本というのも相場だが、神楽の運営は大変なのでだいたいどこの神楽へ行っても3000円くらいを祝儀袋に包むようにしている。神楽にはお世話になっているので出来れば5000円くらい包めるようになりたいものなのだが…。
ここでは尾八重神社のお札と「シシ汁券」「折り詰め引換券」というのをお返しにくれて、この「シシ汁」が楽しみなのである。今年も大鍋でグツグツと煮ていた。
さて肝心の神楽は7時からスタート。やはり正式な御神屋での舞は体育館とは段違いで素晴らしい。「清山」ではところどころビデオに撮ったが、次の「地割」はすべて撮影することにする。だって舞のキレがとてもいいんだもの。
デジカメはストロボをたきたくなかったので感度を1600にしてみたが、PCに取り込んでみたら粒子が粗くてガッカリ。まあ、きれいな写真は同行の高見さんとか一眼で撮っているので僕のはほんの記録程度でいいのだが。
三十三番の五番目、子供が舞う「花鬼神」は尾八重神楽をもたらした壱岐宇多守(いきうたのかみ)の神面の舞ということになっているが、ここにも花と子供の関係があって気になる気になる。
早めにいっぱいシシ汁をいただき、もう少し煮込んでも上手そうだということで夜中にも一杯。食券がなくても一杯200円でもらえるのである。安い!!
焼酎も回ってすっかりいい気持ちで夜が更けていったが、一番酔っている頃に「限界集落」の取材から尾八重に来るようになったというNHKの記者を紹介されたもんだから神楽を熱く語ってしまう。
この尾八重神楽は地元に住んでいる人は一人しかいなくても、あとはみな祭りのために「帰ってきて」参加しており、しかも練習も熱心にやっているから祭りがなくなることはしばらくはないだろう。でも「限界集落」が誰も住まなくなって「消滅集落」になったらどうなるのか。
九州とはいえ山間の明け方は冷え込んだが、野外にもかかわらず一時爆睡。焚き火のそばだったのが幸いだった。
ここのお囃子の笛は高千穂神楽に似たメロディーもあれば東米良の中の又神楽に似たメロディーもあったりして、面白い。西米良に見られる三拍子系のリズムパターンもあるが、ここでは3-3-3-2で2拍子のところがリタルダントというパターンになっていて、これはおそらく舞に合わせていて変化していったのだろう。
もともとは一定のビートで舞っていたものが、舞いに合わせるようになったんじゃないかというお囃子は日本中にある。現代のダンスミュージックにはないものだが、慣れてくるとこれはこれで「ダンサブル」に感じられるのは「ひいき耳」か?
今年も三十二番目の「百二十番」では参詣者として舞に参加。今年もうまくいかなかったが楽しかった。
そして清々しい朝日が差し込む中での最後の「舞上(まいあげ)」は「まだこんなにエネルギーが残っていたの?」と驚くくらいダイナミックな舞で感動した。
二年がかりでやっとホンモノを体感することが出来た尾八重神楽。―知られざる米良神楽の逸品―という高見さんの表現に納得の神楽だった。