奥三河の花祭

先日「ダンス白州」でご一緒した御園花祭の尾林克時さんに帰ってからおねだりをした。
それは花祭で舞い手が手に持つ「採り物」の鈴をひとつ貸して欲しいというものだった。

日本中の何千とある神楽で鈴を使わないところはほとんどないだろう。でも、本でも書いているのだけれど、花祭で使っている鈴は「遠山霜月祭り」や「坂部の冬祭り」など三信遠の祭りで使われている他は宮崎の「尾八重神楽」などで似たタイプのものがあったりと、少数派の鈴で、古いタイプと見ているのだが、さらに花祭では他の神楽では見られない、高度な使い方をしているのだ。

そのことについては『神楽と出会う本』を買って下さい、なんてセコいことは言いません(笑)。
それは、ミュートして鈴が鳴らないようにする持ち方と、鈴を開放して音が出るようにする使い方をひとつの舞の中で使い分けているのである。
「花の舞」という稚児の舞でもこの使い分けをちゃんとしているわけで、これだけでも「すんごい」ことだと僕は思っている。

この鈴、以前から欲しかったのだが、作っていた鍛冶屋さんが亡くなってしまったそうで、新品は無理と諦め、尾林さんに「余っているものがあったら貸して下さい」とお願いしたのである。
もし誰かから奉納されたものだったらそれは預かれないのだが、尾林さんが亡くなった鍛冶屋さんにたくさん作ってもらったことがあり、貸していただけるものがあるとの返事をいただいた。

そして札幌の自宅にいたときに届いたのが、予想外に使い込んだ鈴で、八つ付いている鈴の一つはもう破損していた。その鍛冶屋さんの作る鈴は薄いので、壊れやすいのだという。

これまでの御園の花祭の歴史の中で「花の舞」や「地固め」「三つ舞」「四つ舞」などで、緊張や晴れ晴れしさや、辛さなど、舞い手の思いを共にし、神さまの依代にもなった鈴を間近に見たら、涙が出てきてしまった。
これからはこれを「神楽ビデオジョッキー」などで実際に見てもらい、その高度な使い分けも紹介していきたいと思う。

大事な預かりものなので連れ合いのみかみめぐるに頼んで袋を作ってもらった。彼女は神ごとに関しては僕よりも深い思いと理解を持っているので忙しい中、ミシンを踏んでていねいに袋を作ってくれた。

まずは6日のジュンク堂ロフト名古屋店のトークショーに持っていくので、実物の鈴の姿と音色を体感して下さい。
https://sites.google.com/site/hanamatsurifukawa/
それから、尾林さんによれば、今、この鈴を作ってくれる鍛冶屋さんを探しているそうです。もし、そんな人がいたら連絡下さい。