旧暦大晦日に

神楽は、現地でのものを見なければ真髄はわからないのだが、田中泯さん主催の「ダンス白州」での神楽公演は、特別の「奇跡的」な空間が生まれる。

去年の「東京花祭」を見に行ったときに、御園のリーダーである尾林克時さんから「2月に泯さんのところに呼ばれて花祭をやるから、いらっしゃいよ。一緒に泊まればいいし」と声をかけていただき、「これはまたすごいことになるぞ」と思って、「はい、是非!」と答えたのだった。

何が「奇跡的」かというと、観客がダンスとかパフォーマンスの当事者であったり、関係者であるので、見る際の集中力、また舞いに対する理解力などが高いのである。

本来の祭りは、義理で来てる人もいれば、冷やかしで来ている人もいて、それがまあ、自然な姿なのだけど、白州での時空は「濃い」。

そして舞台も泯さんが本気で作っている。5年半前の夏に御園の花祭を招くことを決めた時に、実際の舞庭を調べに行って、現地を出来るだけ再現したものを作ってしまったのだ。これは本来、文化庁とかが作らなければいけないようなもので、こういう舞台が東京にあったら、あのなんかさみしい舞台上での花祭を見なくて済むのに…。

これをまた真冬にやろうとした泯さんもすごいが、やりに来た御園の人たちもすごい。しかも長老始めベテラン勢が勢揃いなのである。きちんと神事から始め、「市の舞」「三つ舞」「榊鬼」「湯ばやし」など、短縮版ではあるがいろんな演目を真剣にやってくれたし、榊鬼が終わった後に泯さんと記念写真を撮るというご愛嬌もあった。
この真剣さと、ぶっちゃけた楽しさの両方あるところが神楽の魅力であり、日本人の信仰の姿なのである。


さすがに白州の夜は寒くて、途中で神座にストーブを持ってきてもらったり、酒を燗するためにヤカンを用意してもらったり、寒さで震えている人に熱いお茶ホカロンを用意してもらったりなど、裏方でも忙しかったが、さすがに白州のスタッフはテキパキと動いてくれて無事に花祭は終了。僕も余っていた衣装を着せてもらって、歌ぐらを歌ったり、笛を吹いたりという時間もあり、現地と同じように参加させてもらうことも出来た。

打ち上げの時はもうすっかり酔っぱらっていたが、しっかりと本二冊販売。御園の人たちと同じ旅館で風呂に入り、チャーターバスの運転手さんとの相部屋で爆睡。
そして快晴の旧正月元旦の朝、朝食のテーブルにはまたビールとお銚子が並んでいるのであった(笑)

泯さん、ダンス白州スタッフの皆さん、参加者の皆さん、御園の皆さん、お世話になりました。