晋州仮面劇フェスティバル

micabox2009-05-31

この日もちゃんと朝8時の朝食に参加。11時からは僕の「神楽説明会」である。
初日の「仮面展」の会場を使って壁にプロジェクターで映写する神楽ビデオジョッキーだが、この日は各地の神楽の中の獅子舞ばかり見てもらうことに。
それほどの数はないが、銀鏡、尾八重、高千穂の宮崎もの、花祭、坂部冬祭り、新野雪祭りの三信遠もの、早池峰、杉沢比山の東北ものに兵庫の上鴨川住吉神社神事舞を加え、オマケとして先日新宿で見たチベット僧のチャムの動物仮面舞踊を見てもらった。
集まってくれたのは、毎回来てくれるフェスに近い人たちと、シンポジウムに参加した先生何人かと大学生らしき女子たち。終了後にいろいろ質問を受けたのだが、なかなか答えるのが難しい。
かなり細かい質問をしてくるのだが、基本的な情報を共有していないので答えるのがなかなか難しい。学者の人ならスラスラと答えられると思うのだが、そういう答えでは彼らに難しすぎるのである。
「東日本に鹿踊りが集中しているとシンポジウムで報告されたが、鹿の文化は西日本にもあるのと聞いたことがある」というような質問なのだが、どうもよく聞くと奈良公園の鹿が神の使いになっているというようなことのようなのだ。
素人に重箱の隅をつつかれている感じかな。
研究者の井上さんがもしその場にいたら、僕にとっては助けになってありがたかっただろうが、井上さんにとってはストレスの溜まる質疑応答になったと思う。

ワークショップには4月のソウルにも来てくれたソウルフレンドのヤンさんとハンさんがかけつけてくれた。ヤンさんは奥さんと一緒に。ヤンさんと奥さんは4年前にも来てくれて、ヤンさんは遡ること7年前にも来てくれた。
4月の報告にも書いたけど、彼らは民主化運動の当事者で、晋州のフェスにもその当事者が多い。2002年に「ヤン・ドンチュンという光州事件に関わった友達がいる」と言ったら「誰かヤン・ドンチュンを知ってるかー?」とすぐさまスタッフに声をかけてくれた。そしたらなんと「おー、知っとるぞー!!」という反応があり、すぐ携帯で連絡を取ってその翌日には光州から晋州までヤンさんが駆けつけてくれたということもあったのだ。
日本の学生運動の世代にわかりやすく言えば、この人たちは金芝河の同志たちなのである。

ヤンさんはフェスティバルの委員長であるキム・スヨプさんとも旧知の仲で、僕がヤン・ドンチュンと親しいということで信用がアップしたのではないかと思っている。人の縁というのはほんとうに絶妙なものだ。友達はお金でははかれない。円より縁。

フェスの中心メンバーと研究者たちはこれから犬肉を食べに行くけど、一緒に行くかと誘われたが友達と別行動をすることに。
もしヤンさん、ハンさんも一緒に行くといえば招待してくれただろうけど、ヤンさん夫妻は肉を食べないし、ゆっくり話しをしたいのでソウ・クムシルさんに通訳を頼んで別行動にすることにした。ソウ・クムシルさんは4月のキム・メジャさんの公演の時の通訳をしてくれた人で、今回は僕のワークショップの通訳を頼まれてソウルの方からやってきたのだ。彼女は最近韓国人と結婚した在日三世なのだが、そのダンナさんという人も伝統芸能と演劇をやっている「金はないけど自由」な人で、今回のフェスの出演者に友達がいっぱいいるようで一緒に来てくれた。類が友を呼んでいるのかな。

で、フェスのスタッフが僕たちの昼食をセッティングしてくれて、ワークショップの会場の近くのビビンバの名店へ。ここは去年もばばちゃんたちと行った築80年の建物の店。日本が占領していた頃なので日本的な作りの建物になっている。
人気店でこんでいるのでカップルが座っているテーブルに相席ということに。しばらくしたらカップルの女の子の方がハンさんに声をかけ、「ハンさんですよね」みたいな話しに。彼女は4月のキム・メジャさん公演も見に来ていたらしく、僕の顔も覚えていたらしい。
実はハンさんは自然農のカリスマとして、自然医学の治療家として「その世界」では著名な人で、今は里山の一番奥の電気もないようなところで自給自足に近い生活(ソーラー発電は使用)をしているけれど、彼のところには自然農を習いに来る人がいるし、病院から見放された、あるいは近代医学を信じない人が頼ってきていて、それを治しているのだ。
医者でない人が治療をすると違法なので、はっきりさせておくけれど、「治す」のではなく「本人が自力で治る」ような環境を作ってあげるのである。
その基本は「断食」と「食事療法」。最近も甲状腺の悪い「看護師」が頼ってきて、「薬を飲まないと気を失ってしまう」と訴えたらしい。ハンさんはその「失神」こそが大切なのだと諭して彼女を失神させたら病気は治ったよ、と。
かつて全裸で畑仕事をすることでも有名だったハンさんだが、「自然の摂理」をほんとによく理解している「自然の人」である。

で、その相席の女の子はハンさんの電話番号を書き留めていた。で、ハンさんが「この人がヤン・ドンチュンだよ」というと、「アイゴー!」みたいなリアクション。ヤンさんも「その世界」では有名なのだ。
…で「その世界」はなにと言われると長くなるのでPASS。

食事の後は僕の部屋でのんびりしようということでぞろぞろと宿に。掃除のおばちゃんが「なんだなんだ」という感じだったけど僕の顔を見て「オッケー」の顔。
ハンさんが自家製のドブロクマッコリを持ってきてくれたのでまずはそれで乾杯をしようということに。こっぷがないと言ったらヤンさんが掃除のおばちゃんに「コップ5つ持ってきて」なんて頼んでる。で、おばちゃん「イエー」って言ってすぐ持ってきたくれるところが韓国の融通の利く世界なのである。

手作りマッコリと手作りお菓子でしばしば歓談。マッコリは酵母が生きているのでフタを取ろうとしたら吹き出しそうになった。あわてて風呂場から洗面器を持ってくる。
味は市販のものよりキツくてうまい。ちょっとクセはあるけど、それもドブロクっぽくていい。
もうひとつ、桃や梅や山リンゴなど、果物やいろんなもので作った「酵素ジュース」も持ってきてくれた。ソウルに持ってきてくれたのとはまた味が違って美味しい。体がすぐに反応する感じである。
そのうち体の話しになったらヤンさんが最近自分で開発した治療器械を取り出して、診断してくれた。なんかぜんぶ自分で作っているらしい。「ZEN Field」と名前がついたこの器械、なんか+と-みたいなバーを両手で持っていろいろ診断する。いろいろなコードを打ち込んで診察し、治してくれるという。目指すところは仏教の「なんとか道」という境地で、これは通訳者もうまく通訳出来なかった。
低周波治療みたいな電気を感じて時々感電したみたいで恐かった。でもヤンさんが「気診」みたいに治療するとその電気の感じが薄くなっていくのね。で、今の僕の大きな問題は「ストレス」。
はい大正解。
ヘラヘラとしているけど、けっこうドキドキの人生だかんな。
「まだ肉体的には現れないけど大腸が心配」とも言われた。気をつけなきゃ。
僕を通して家族も見てくれたけど、かなり今の状況を言い当てていた。

ちゅーところですっかり長くなったので、これで晋州三日目その1としましょう。