花巻にて

朝、ピックアップしてもらって千歳空港へ。
8時50分のいわて花巻行きの便に乗る。前夜、山陽君と飲んでしまったので、酒がまだ残っている感じ。

空港からバスで花巻市総合体育館へ。10時過ぎで、二つ目の演目をやっている頃だったがすでに場内は多くの人が入っていて、岩手での神楽人気の高さに驚く。ほとんどが年配の人だが。
場内を見渡したら一番前で東京から来た小塚さんがせっせと絵を描いていた。小塚さんは二年前から神楽はまり、その場でスケッチを続けていて、東京では個展もしている。今回も朝一で並んで一番前の桟敷席をゲットしたようだ。
事前に団体申し込みをしていたので、パイプ椅子の席を確保しいていてくれて「ヌーベルフロンティアご一行様」という紙が貼ってあった。
僕は花巻の後に秋田で神楽VJをする予定なので、販売物やなんやかんや荷物が多くて、どうしようかなと思っていたら、伊勢大神楽のメンバーがいたので控え室に置かせてもらうことにする。
小体育館みたいなところが、卓球の試合をする時に使うようなフェンスでスペースが仕切られていて、出演する神楽がそれぞれ準備をしていた。さすがは体育館。

伊勢大神楽の人たちに挨拶をして、それから地元の石鳩岡神楽の人に挨拶をしたりして、それから会場に戻り、壁際で立って神楽を見ていたら盛岡大学橋本裕之先生に声をかけてもらった。
橋本先生とは数年前の猿田彦大神フォーラムに講師として来てもらった夜に一度一緒に飲んだだけだったのだが、覚えてもらっていて、今回事前にいろいろ連絡を取り合っていたのだった。年代が近いし気さくな人なので、友達感覚で付き合ってもらえる感じで、会うのが楽しみだった。

伊勢で会ったときは千葉大学の先生だったのだが、最近盛岡大学に移ってきて、かつて足繁く早池峰に通っていたと言うことで早池峰や石鳩岡の人たちとまたお付き合いが再開して、今回のイベントにもいろいろ協力をしていたようだ。
僕にとっては本を出店ブースで売ってくれることになった地元の民俗芸能プロジェクトをしている阿部さんという地元のキーパーソンになっている人なども紹介していただいたりして、久しぶりなのにとてもお世話になってしまった。
神楽自体は地元岩手の神楽から始まり、根子番楽、伊勢大神楽、保呂羽山の霜月神楽など他県からのゲストが次々と出演する。
地元の神楽はやはり早池峰神楽の系統や、そうでなくても山伏神楽の要素の強い神楽が多い。それぞれがもっと演目を短縮して40分ほどの間にいくつもやるのかと思っていたら、持ち時間を一演目で通す神楽もいくつかあった。
札幌からのツアーの人たちは神楽初体験なので飽きないかな、と心配していたが、場内の熱気に包まれていることもあり、楽しんでくれているようで一安心。
今年、地元の石鳩岡神楽を招いた韓国・晋州仮面劇フェスティバルのチョンさんも来ていて「私には、いろいろな神楽が出るのはうれしいです(笑)」と、撮影禁止の中、外国人として熱心にビデオを撮っていた。

昼休みに出番後の石鳩岡神楽を控え室に訪ねたら、橋本さんもいて床に車座になり、菅原さんたちと直会状態。花が咲いている昔話を興味深く聞く。本田安次先生が訪ねてきた頃のすんごい昔の話だ。
もちろん神楽衆だから昼間から御神酒もいただいたのだが、前夜飲み過ぎたので残念ながらなめる程度での参加。パイプ椅子に座っていた人も「座った方が楽だ」と言いながら混ざってきてくれて、一緒に飲んでひととき盛り上がる。


しかし、出演団体同士の交流というのが控え室で見られなかったのが気になった。う〜ん、もっと仲良くしてほしいのにぃ、主催者がもっと気を使えばいいのになあ。これからこういうイベントが増えるだろうから、そのうち仲良くなるのだろうが。
午後の演目が始まっても飲んでいたが、見たい神楽になってから解散。また会場に戻った。

午後の三番目に出た伊勢大神楽は、東北以外としては一番手。それまでのものと雰囲気がずいぶん違ったので、効果的だった。もっと曲芸をやるかと思ったら、ほとんど舞だった。もう少し曲芸とチャリを見せて欲しかったな。
続く保呂羽山の霜月神楽は10年ぶりだろうか。「神入舞」という真剣を使う舞を舞ったのは、僕が10年前にファンになった人が舞っていて、うれしかった。どこの神楽にも「この人は神楽をやるために生まれてきたみたい」という人が一人はいるのだが、この人はそういう人として特に印象に残っていたので、元気に舞ってくれて一人で興奮した。
一時間くらいおしてプログラムが終了。


石鳩岡神楽の菅原さんが予約してくれた居酒屋にツアーのメンバーと、韓国のチョンさんと、小塚さんと移動して夕食兼酒宴。菅原さんも参加してくれて、いろいろ興味深い話をしてくれた。この日小塚さんが描いたスケッチを見た菅原さんが「特徴を良くつかんでいる」と驚いていた。

夜遅く、ホテルにチェックインして大浴場で体を温め、爆睡。
下の絵は小塚さんが去年訪ねて描いた早池峰神楽