10月3日のトークイベント報告

 3日の夜、多摩美の芸術人類学研究所とカフェバッハ共催のトークイベント「ドンパチとゲイシャ- パナマスペシャティーコーヒー〜カフェ文化をデザインする」に顔を出してきた。
 現在所長は中沢新一さんから引き継いだ鶴岡真弓さん。
山谷にある「カフェ・バッハ」代表であり、日本スペシャティー協会の会長である田口護さんと鶴岡先生のトークだ。
http://www.tamabi.ac.jp/iaa/toptopic/
http://www.bach-kaffee.co.jp/
http://www.scaj.org

 会場は初めて訪ねた秋葉原近くの「アーツ千代田3331」の中にある「エイブル・アート・ジャパン」の「A/Agallery 内オープンスペース」だ。「アーツ千代田3331」の1Fを見て歩いていたら「三上さん」と声をかけられる。誰かいな、と思ったらイベント参加の知り合いではなく、なんと11月24日に宮崎の日向市で行われる「カムヤマト」というイベントにライブで僕を呼んでくれたカワノチカさんではありませんか。偶然にしては出来すぎの遭遇だ。新潟へ行く夜行バスに乗る前の時間をここの見学でつぶしていたらしい。

 定員30名のトークイベントだったので、入れるかどうかわからなかったが、彼女を誘い、空席待ち扱いにしてもらう。

 始まったトークはまず田口さんによるスペシャティーコーヒーの生産地などの映像を使っての解説。コーヒー産業が大資本による搾取にならないよう、現地を訪ねて直接顔を合わせ、話し合い、フェアトレードの関係を作る仕事をアフリカや南米で展開しているそうで、豆の選別もその重要な要素。手間はかかるがきちんと選別することで付加価値が生まれ、相応の収入を生産者がえることが出来るという。

 そして鶴岡先生によるカフェ文化の話になるが、ただのカフェのマスターではない田口さんがどんどん割り込んできて面白い。カフェという空間がどれだけ、人々の情報交換や交流、また助け合いの場となって新しい文化を生んできたかという話がフランス革命や保険の誕生などのエピソードを交えて語られる。そしてそれは当然、今のカフェビジネスのシステムの話にもなるし、小売業が成立しないコンビニシステムの話にもなる。

 田口さんの話で印象的だったのは、学生時代にお金に困っていた時、常連になっていた店の人がお金を貸してくれたことが大きな要素となって、カフェを始めるようになったこと。「昔は酒を飲むのも赤ちょうちんやママのいるバーみたいなところで、話をして心を通わして酒を飲んでいたが、今はもうそれも少なくなっている。小売店ではいろいろやりとりをして買い物が出来るが、コンビニでは効率化のために店員の会話は禁止だ。」などなど、山谷にカフェを構えたというのもすごいことだし、若い時からただ者ではなかったことが話しを聞いていてよくわかった。
 それから、最近、コミュニケーションを求めて店に来るアラフォーくらいの女性が増えてきたとも。日本は欧米と比べると女性のコーヒーを飲む量が少ないのだそうだ。

 ドンパチというのはもちろん戦争のことではなく(笑)、ドンパチ農園主の名前。ゲイシャというのは豆の品種。トークの間にデミタスカップパナマ・ドンパチ農園の「ティピカ」と「ゲイシャ」、そしてコスタリカのウェストバレー農場の「グレースハニー」と三種類のコーヒーが配られて、試飲することが出来た。そして最後にカフェバッハのケーキと沖縄サミットで世界の要人にサーブしたというコーヒーも飲ませてくれた。カワノさんも無事に座れてよかった。

 僕もコーヒーが好きで毎朝自分で淹れて飲んでいるが、店で飲むことは旅先以外ではほとんどない。だって、スタバとかドトールで黙って飲んでてもつまらないからね。昔ながらのカフェがあるならこれからは時々顔を出してみよう。

 打ち上げでたまたま田口さんの向かいに座ることになり、名刺をさし上げたらなんと、田口さん、神楽が好きでこんど高千穂神楽に行きたいと思っているとおっしゃるではないか。もう備中神楽は見てきたそうだし、他にもいろいろ見ているようだ。東京で民俗芸能関係者以外でちゃんと神楽のことを知っている初対面の人は、初めてかもしれない。やはりただものではない(笑)

 隣に座った春日聡くんとはバリやインドネシアの話で盛り上がっていた。インドネシアはコーヒーのよい産地でもあるしね。
 そんな時は、反対側の隣に座った畑中章宏さんと、民俗芸能の話やら平凡社の話やら、いろいろしたのでありました。

 自分の「お神楽ナイト」の前夜ではあったけど終電近くまで盛り上がり、とても楽しく有意義な夜でした。