山内" アラニ"雄喜さんのこと 8/25お神楽ナイト

70年代半ばに早稲田大学の近くの住宅街に「John Boy's Restaurant」という店があった。民家を改装したロックカフェで、ジャズ研に所属していたもののロックやフォークロックの方に興味が向いていた僕に、いろいろ教えてくれた店で、トイレの壁にはドクター・ジョンの「GUMBO」のジャケットの絵が描かれていたあたりから、その雰囲気は想像してもらえるだろう。

ちょうどその頃、ギャビー・パヒヌイが注目されていた時期で、それはライ・クーダーによってひろく紹介されたわけだが、それによってぼくたちは「ハワイアンとはこういうものだったのか」と、驚いたものである。
そしてある日、マスターの松浦洋海さんが「日本にもスラッキーギターを弾く人がいたんだよ」という驚きのニュースを教えてくれて、その店でライブを聞くことになった。

それが山内"アラニ"雄喜さんなのだが、松浦さんと山内さんの出会いも面白い。あるレコード店でふだん人が寄りつかないハワイアンのコーナーに、二人並んでレコードを漁っていたのだが、それはとても珍しいことなので声をかけて話をするうちに意気投合してお店でライブ、ということになったのである。

そして松浦さんは久保田麻琴さんとも親しかったので、ある日、山内さんのバンド「パイナップルシュガー・ハワイアンバンド」のライブに久保田さんがサンディーと見に来たのである。その演奏がとても良かったので、それ以来山内さんはサンディーにとってハワイアンミュージックの大切な存在になっていったし、山内さんは日本のハワイ音楽プレイヤーの第一人者、また研究者としても知られるようになったのである。

ちょうどその頃、自主製作レコードの録音を山内さんの自宅二階の「コンニャクスタジオ」でやっていたので、夕焼けのケンちゃんたちと一緒にそれを見に行ったこともあるし、ちょっとだけスラッキーギターの手ほどきも受けた。今僕はスラッキーウクレレを弾くことがあるが、これは山内さんから習ったおかげである。

それから山内さんは「ハワイのミュージシャンはみんな仕事をしながら音楽をやっているんですよ。だから僕も家業のコンニャク屋をしながらの兼業音楽家でいたいんです」ということも話してくれて、僕が現在「兼業音楽家」を名乗るのは実は山内さんの影響が大きい。僕は人の影響を受けやすいのである(笑)。

その時のレコードは評判が良くて、すぐにポリドールでも録音してLPを出した。そしてそのジャケットはいわゆるハワイっぽいものでなく、ハワイの山の写真だった。山内さんは「ハワイはビーチだけじゃないんです。山には牧場もあるし、いろいろな姿があるんです」と言っていたが、そのこだわりが生んだジャケットで、「パイナップルシュガー・ハワイアンバンド」は衣装もアロハの典型的な模様のシャツを着ることはほとんどなく、テレビに出るときもチェックのシャツを着ていた。

「ほんとうのハワイは違うんです」ということを常に訴えたかったのだろう。僕も神楽を通して「ほんとうの日本は違うんです」ということを訴えているようなものなので、どこか似ているのかもしれない。

その後、札幌に渡った僕はだんだん山内さんと疎遠になってしまったが、10数年くらい前青山のCayで山内さんの師匠であるレイ・カーネのライブを見に行って再会。そしてその数年後に伊勢の猿田彦神社のおひらきまつりにサンディーが出演したときにまた再会、そして今年は名古屋の手羽先屋で偶然再会、という縁が続いているのである。

そしてここからが本題。出会ったから30年以上経つ山内さんに8月25日、東中野のポレポレ坐での「お神楽ナイト」のゲストに来てもらうのである。人前に一緒に出るのは初めてのことだ。
ハワイの古典フラはもともと神事色の強いもので、それは根本的に神楽と同じ。音楽もダンスも全然違っているが、それは当たり前のことだけど、どこかつながりが見つかれば面白いし、山内さんに神楽をいろいろ見てもらって、どんな話が聞けるか楽しみである。

また、ギターもウクレレもなかったハワイの伝統的な音楽に、これらの楽器や西洋音楽が入ってからの音楽の変遷はとても興味深いもので、勝手に自分たちの弾きたいように弾き方を変えたり楽器を改造したりしたのは、アフリカ人に似ていて興味深い。ぼくは日本人がハワイ人のように西洋の楽器や音楽を取り入れたらどんな風になっていただろうか、といつも妄想しているのでこのあたりの話もしてみたいものである。

そしてせっかくなのでギターを持ってきてもらって、演奏もしてもらいます。僕もいつものように太鼓を運んでいくので、どんなコラボになるかわからないけど、山内さんとぼくの縁を考えたらぼくの太鼓の響きとスラッキーギターの相性は絶対にいい、という確信があります。

是非、聞きに来てください。フラの踊れる人がいたら僕の太鼓でフラを踊ってほしかったりして(笑)

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三上敏視のお神楽ナイトVol.9 "神楽の音楽とハワイの音楽" 
ビデオジョッキー、トーク、ミニライブ

■日時:2011年8月25日(木)18:30open / 19:30start
■料金:予約2,300円/当日2,500円(+要ワンオーダー)
■予約:03-3227-1405(ポレポレタイムス社)Email : event@polepoletimes.jp

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日本で大人気のハワイのフラは、もともと神楽と同じように神と交流する神事の要素が強いものでした。
フラそのものは神楽とは全然違うものになっていますが、根底には 共通のアニミズムシャーマニズムがあるでしょう。
今回は、ハワイアンミュージックの日本での第一人者で、ハワイ音 楽の研究者でもあり、サンディーやKONISHIKIにとって大切な音楽パートナーである、山内"アラニ"雄喜さんをゲストにお招きして、日本の神楽の映像を見ながらハワイと日本のルーツミュージックの話などをしてみたいと思います。
実は三上はアラニさんとは30年以上前からのお付き合いなんです。
そんな関係でなんとミニライブも実現!!
ハワイアンスラッキーギターと神楽の太鼓の初共演も試みます。
和太鼓じゃないですので念のため(笑)
三上敏視

http://za.polepoletimes.jp/