御園花祭ビデオ上映会延期について

地震津波原発事故と大変な状況が続いています。
ご存知のように、これは地球規模でも未曾有の激甚災害で、多くの人たちの命も失われています。

このような状況の中で、今週末に東中野のポレポレ坐で予定されていた「御園花祭の上映会〜一夜の神楽を一夜かけて見る〜」という企画、よほどのことがない限り開催したいと考えていましたが、諸般の事情で残念ながら延期となりました。

僕がよほどのことがない限りやりたかった理由は以下のようなことです。

今回の企画は、愛知県、奥三河の山間地で何百年にもわたって暮らしてきた先人達から伝えられてきた信仰文化である「花祭」を、ビデオ映像を使ってのバーチャルではありますが、同じ時間経過で体験していただきたいというものでした。
この列島各地で何百年も続けられてきた祭りには時代の変化にも負けず守り続けてきた「何か」があり。それは日々の暮らしや信仰によって培われてきた、その土地で生きるための「知恵」であり「覚悟」であり、「境地」であり、「祈り」なのです。
つまり、豊かな恵みを与えてくれる自然は、時に抗えない理不尽な災害を突然にふりかけてくるけれど、その自然に先人は「神」「精霊」などを感じ、その後、道教、仏教、陰陽道などさまざまな信仰からも神仏を取り入れて、呪文、祭文などを伴う神事や歌舞音曲の芸能などの行為を使って、自然とのつき合い方、折り合いのつけ方を改めて確認、祈願するための祭り-神楽を行ってきました。神楽は神仏との交流の場であり、山や川、海の精霊たちとの交流でもあるわけです。

今回、被災したエリアには著名なだけでも、宮古市には黒森神楽が、雄勝町には雄勝法印神楽が、鮫町には鮫神楽など神楽がたくさんあり、他にも様々な民俗芸能が人々によって伝えられています。
日本中にそのような神楽がたくさんあるわけですが、その中でも奥三河の花祭は、生まれ清まりの湯立を中心に、夜を徹して舞い続け、強い祈願を表している霜月神楽です。

今回の災害によって被害を被った方、犠牲となられた方達のお見舞や鎮魂の意味も込め、あらためてこの列島の、豊かであり、また苛酷な環境で生き続けていくために、先人が培い、長く伝えてきた神楽を見ていただくことで、ポスト3.11の私たちの生き方をあらためて考え直してみるきっかけとなれば幸いだと思いました。
映像ではありますが、そこにあるものは祭りですから神人共食で上映会では御神酒も入ります。それを見ていて一緒に舞い、歌うこともあるでしょう。それは楽しいことではありますが、決して現実を忘れるためのものではありません。

御園からも何人か駆けつけてくれて、実際に使う道具なども見せてくれるし、東京花祭の人たちも応援に来てくれる予定でした。
ですからもともとの目的ではありませんでしたが、これを一種の「臨時祭」と考えて、祈願の気持ちを強く持って一晩を過ごしたいと思っていました。

事態が落ち着いたら、ぜひ開催したいと考えていますから、そのときはぜひご来場ください。

なお、この上映会の主催は特定非営利活動法人「御園夢村興し隊」で、僕はこのNPO文化庁から助成を受けた「地域伝統文化総合活性化事業」の中の「御園花祭」伝承活性化委員会の委員としてこの上映会の企画運営に関わっています。